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AlphonseのCINEMA BOX

管理人Alphonseが観た映画の感想を書いているブログ。

宮崎駿監督作品特集


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■ロボットアニメとの戦い

ここからは、宮崎作品が公開された頃のアニメ事情をわかる範囲で書いていこうと思います。

ルパン(1979年)の頃

TV版ルパンのスタッフをしていた頃。
この頃のアニメ界は視聴率がよければすぐに続映決定。
映画でいうところの続編決定。
1年以上続くアニメなど普通でした。
ところが、スタッフは半年の予定で作ったものが、もう半年とか急に延長になる。
毎週締め切りに追われる漫画家同様、急遽脚本と作画をこなさなければならない。
しかも満足いくものができなくても納品し続ける制作現場。

それでも食べるために仕事の好き嫌いなどいっていられない。
なんだかんだで、「未来少年コナン」の後に「ルパン」を手がけることになります。

実はこの時、神のいたずらとしかいいようのない偶然なのですが、奇しくも「ガンダム」の初回放送があったのがこの年なのです。

その後、「名探偵ホームズ」という知っている人は知っているが、知らない人はおそらく全く知らないアニメを手がけます。
犬を擬人化したホームズが毎回難事件を解決してゆくというお話です。
高所の寸止め演出もあって私は好きだったのですが、いつの間にか終了してしまい、再放送されることもない幻のような作品です。
これ以降しばらくTVでは宮崎作品を目にすることは出来なくなるのでした。

(後年になってウィキペディアで知ったのですが、「名探偵ホームズ」にはホームズがタバコを吸うシーンがあります。そのシーンに対してホームズの原作側からクレームがきたため中止になったのだとか。)

ナウシカ、ラピュタ(1984年~1986年)の頃

この頃のアニメ界は「ガンダム」人気の影響を受けてロボットアニメ全盛期。
「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」が公開されたのもこの頃。
映画界も「ガンダム」のヒットを受けて角川が「幻魔大戦」を公開し、アニメ作品を手がけるようになります。

しかし先述した高視聴率のアニメほど延長に次ぐ延長。この傾向は私の知る限り、80年代後半頃まで続いたはずです。
そのため「うる星やつら」のTV版は総集編だらけになり、「超時空要塞マクロス」のTV版の延長部分は作画のクオリティが急激に落ちています。

高視聴率が取れるぐらいクオリティの高いものを作れば作る程、過酷になる製作現場。
まさに本末転倒。
しかも「ガンダム」人気の影響でTVアニメの放送は急増します。
スタッフ(アニメーター)の数が急激に増えるわけではないのに、放送される作品は増えていく。。。
ついに作画崩壊という事態を引き起こす事になるのですが、それは90年代に入ってから。

このアニメ業界の自転車操業的な悪しき慣習こそが、宮崎監督があれほど人気作を製作していながら「ホームズ」以降TVアニメを製作しなかった理由でしょう。

しかも製作側のスポンサーからの意向に沿う形でしか作りたいものが作れない。このあたりの辛酸を舐めたのは富野由悠季監督でしょうが、ここは宮崎監督作品特集なので割愛します。

その富野監督にライバル心があったのか、TVアニメでは満足のいくものが作れないと思ったのか、宮崎監督なりの近未来SFを世に問うたのが、「ナウシカ」。
そして時代をスチームパンクと呼ばれる蒸気機関全盛の時代に移し、SFともファンタジーともとれる作品が「ラピュタ」でしょう。

今でこそ名作と呼ばれる二作品ですが、公開当時はそれほどヒットしたとはお世辞にも言いがたいものでした。
「ガンダム」人気に押されて一部のファンの間でしか評価されなかったように思います。
緻密な設定を良しとする「ガンダム」とは似ても似つかぬ茶色のロボットが登場するぐらいで、メカらしいメカは一切出てこない。主人公のパズーも昔のアニメに登場したような典型的な熱血キャラですしね。

トトロ(1988年)の頃

同じ近未来SFの舞台では「ガンダム」には太刀打ちできないとおもったのか不明ですが、子供向け作品として「トトロ」を世に出します。
知っている人は知っているとおもいますが「アルプスの少女ハイジ」を手がけたことのある宮崎監督。
自分の得意分野で勝負しようと思ったのかもしれません。

けれど、すでにアニメは子供だけのものではなくなってきていました。
「AKIRA」が「トトロ」と同じ年に公開されているのですから。

このように宮崎作品のライバルは「ガンダム」から始まったロボットアニメとの戦いでもあり、大人向けアニメとの戦いでもあったのです。

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