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AlphonseのCINEMA BOX

管理人Alphonseが観た映画の感想を書いているブログ。

シン・ゴジラ特集


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■感想

映画開始から、「巨大不明生物特設災害対策本部」(以下「巨災対」)が設置されるまでの数分間は、通常の人間ドラマとして描かれています。
BGMもなく淡々と政府が対応する姿を綿密な取材を元にあたかも現実であるかのように描き出します。

ところが、自然災害と思われた事象が、巨大生物による事象であると判明し、「巨災対」が設置されてからは虚構のお出まし。
BGMも「エヴァンゲリオン」でお馴染みのBGMが引用され怪獣映画として描かれていきます。

ここまでおよそ30分。
CINEMA BOXに映画を登録するまでに数多くの映画を観ていて気がついたことがあり、このことはある評論家も指摘していることですが、

ハリウッド映画は冒頭の30分でその作品の出来が決まります。

試しに大ヒットしたというハリウッド映画を何でもいいから冒頭30分だけ観れば、私の書いてあることがよくわかる筈です。

冒頭の30分を観て面白いと感じない映画は、その後を観ても大して面白くありません。
これは冒頭の30分に主要な登場人物や主人公は誰で、いつの時代の人で、今後作品の中で何をして、どうなってしまうのか?
その後の気になる展開が全て冒頭の30分に凝縮されているからなのです。
逆に、序盤は面白いのにヒットしなかった作品は、結末に不満の残るものが多いです。

私事で恐縮ですが、こうした思いを抱くようになったのも香港映画を数多く観てきたおかげでしょう。
私が観ていた頃の香港映画はツイハーク監督作品が多く、そのツイハーク監督がハリウッドを意識していたから、冒頭30分をいかに面白くするかに、注力していたように思います。
にもかかわらず、香港映画が日本でヒットしなかったのは、ジャッキーチェンが活躍の場を香港からハリウッドに移したり、香港が中国に返還されて中国の検閲が厳しくなってしまったというのも理由ではあるけれど、結末に不満の残るものが多く、物語も破綻していたからです。

なぜこんな事を書き出したかというと、この作品以前に「GODZILLA ゴジラ」が公開されていたからです。
本作の製作も「GODZILLA ゴジラ」の世界的な大ヒットを受けたもので、当然「GODZILLA ゴジラ」を意識し、ハリウッド方式の冒頭30分に注力したのだろうと思ったからです。

実際に冒頭の30分を観てみると退屈することなく、どんどん物語に引き込まれていくように作られています。
普通なら情報量の多さに辟易し、政府高官の発する専門用語に内容が全く理解できないはずですが、東日本大震災で多くのニュースを見てきた日本人にとって、政府高官の専門用語も日常会話のような感覚で見ることができ、「エヴァンゲリオン」の監督作品ということもあって、「エヴァンゲリオン」で情報量の多さに免疫のある観客はすぐに作品の中に入っていくことが出来ます。

これは私見でしかありませんが、総理大臣(大杉漣)を観客として描いている演出も作品に入り込みやすくしている点です。
総理大臣を権力の象徴のような暴君ではなく、どこにでもいそうな気のいいオジサンとして描き、側近たちは銀幕(総理)に向かって話しかけてきます。
それはあたかも観客に語りかけるように、

「あなたならどうします?」

と訴えているのです。
その他にもなぜか仮名として登場する生物学者の一人がどう見ても宮崎駿監督にしか見えないおふざけぷり。
ともかく序盤でどうにか観客に興味を持ってもらおうと、あの手この手を仕掛けてきます。

その後は「巨災対」開設と同時に「エヴァンゲリオン」でお馴染みのBGMが演奏され、観客のハートをしっかり鷲づかみにして離しません。

もちろん、否定的に作品を評価することもできます。
1954年公開の「ゴジラ」(以下1954年版)の焼き直しでしかなく、政府役人への綿密な取材だけで息切れしてしまった庵野監督は、自身の代表作「エヴァンゲリオン」の実写版を製作するような気で製作してしまった。
また、前作から12年ぶりということで、その間に進歩したCG技術に目を奪われただけの作品と言えなくもない。

以前、CINEMA BOXにも書いたのですが、「GODZILLA ゴジラ」を観るまではどんなにハリウッドがCG満載の映画を作っても、
「日本にはまだゴジラがいる」
とどこかで思っていました。
ところが、「GODZILLA ゴジラ」を観てからは日本にはもうゴジラはいなくなってしまい、日本の特撮映画界はどうなってしまうのか?不安視していたのですが、本作のおかげで杞憂に終わったといえるでしょう。


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