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AlphonseのCINEMA BOX

管理人Alphonseが観た映画の感想を書いているブログ。

松本零士特集


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■ヤマトの矛盾の原因

ここではヤマトの矛盾がなぜ起きたか。
について時系列に書いていこうと思います。
ここからはウィキペディアの情報と私の独断と偏見による憶測でしかありません。
そのつもりでお読みください。

1.松本氏と西崎氏との対立

ヤマトのデザインは戦艦大和をモデルにしています。
下手をすると戦争賛美作品に成りかねません。

そのため松本氏はヤマトを大宇宙を旅する船と考え、戦艦大和にならないよう注意していました。
一方西崎氏はSFやアニメに精通しておらず、ヤマトを商売道具のように考えていたように思います。

そんな事もあってかTV版1作目の第2話では軍艦マーチの使用をめぐって松本氏や若手スタッフと西崎氏は揉めています。
松本氏と西崎氏の対立。これが混沌としたヤマトワールドを構築する最大の原因となっていきます。

2.視聴率の不振による打ち切り

そんなTV版1作目は視聴率が不振で打ち切り。
予定されていたエピソードがカットされ、多くの矛盾が発生します。
松本氏と西崎氏の対立もあり、ヤマトの矛盾はTV版1作目で既に始まっていました。

3.商業主義

TV版1作目の打ち切りで矛盾が発生したように、ビジネスとして成功していれば、矛盾も発生していなかったでしょう。

西崎氏は、劇場版1作目公開前までヤマトから降板するつもりでした。儲けの出ないビジネスに関わるほど、酔狂でもなかったのでしょう。
ですがそんな事はありませんでした。ヤマトが大ヒットしてしまうからです。
これにより松本氏と西崎氏の対立は続いていきます。

4.上映時間

海外輸出のため、TV版1作目を編集し舛田監督により映画化されます。
舛田監督は沖田艦長をメインに据え、TV版で生きていたスターシャは、死んでいた。という編集を行いました。(以下スターシャ死亡編)
これらの編集は上映時間が原因で、矛盾したTV版1作目と整合性の取れない、スターシャ死亡編が出来上がりました。

5.編集版を再編集

TV版1作目が不振なこともあり、スターシャ死亡編の公開は1週間の予定でした。
ところが予定外の大ヒット。

これを受けて「さらば」の製作が決まります。
「さらば」の公開前日に劇場版1作目がTV放送されます。そこではスターシャは生存していたことになりました。(以下スターシャ生存編)
それはスターシャ死亡編をTV版1作目と合わせて再編集したからです。

TV版1作目でもスターシャは生存していたため、TV版1作目とスターシャ死亡編との矛盾を解消したともいえますが、今度は、スターシャ死亡編とスターシャ生存編の矛盾が発生してしまいました。

ここまでの経緯を70年代の私は、知る由もありません。
そのため、TV版を観た際は「映画と違うなぁ」と思い、スターシャ生存編を観た際は、「あれスターシャは死んだはずでは?勘違い?」などと不思議に思ったものです。

6.ヤマトの形をした大和と前作の無視

「さらば」の監督はスターシャ死亡編と同じく舛田監督が務めることになります。

TV版1作目には舛田監督がほとんど関わっておらず、スターシャ死亡編のヒットは舛田監督の手腕によるところが大きいと判断されても仕方ありません。

舛田監督はヤマトを戦艦大和のメタファーと考えていたように思います。
というのも「二百三高地」の脚本家笠原和夫氏と舛田氏が参加した「完結編」が、ヤマトの形をした大和のようになっているからです。

監督は舛田監督に決定。「さらば」で降板し、ヤマトを終わらせるつもりだった西崎氏。
お互いの思惑が一致したのでしょう。

西崎氏のアイデアで「さらば」のラストは特攻になります。
ヤマトを終わらせるには、これしかないからです。
そのため、TV版1作目で生き延びることを重視していた沖田艦長が、特攻を進めるような矛盾が発生します。

また舛田監督作品には続編と呼べるものがありません。
手掛けた作品は1本1本独立した作品と考えていたのかもしれません。
そのため前作との矛盾など気にしていなかったのでしょう。

こうして、ヤマトの形をした大和が、すべての前作を無視して作られていきます。

7.「さらば」の特攻

「さらば」の特攻をめぐって松本氏と西崎氏は再び対立します。

本来なら漫画家である松本氏が新たな漫画作品としてヤマトを描けばよかったのです。
それで済む話でした。
本シリーズ以前にも漫画版とアニメ版が存在する作品はありました。ですが、
漫画は漫画。アニメはアニメ。
微妙に(あるいは大胆に)異なっているのは珍しいことではありませんでしたから。

ところが松本氏はTV版1作目から深く関わっていたため、アニメでヤマトを作ろうとしました。
ヤマトを終わらせるつもりだった西崎氏も松本氏への妥協案として、「さらば」でヤマトを降板し、「ヤマト2」で松本氏の好きにすればいい。とでも言ったのかもしれません。
その結果「さらば」公開前に、「ヤマト2」の製作発表が行われます。

「さらば」のヒットを受けて作られたように思われる「ヤマト2」ですが、製作発表だけは「さらば」の公開前でした。

8.特攻の美化

ここまでは作り手の内輪揉めで済んだのですが、「さらば」が公開されると特攻の描写が問題視されました。

「さらば」が公開された頃は戦争体験者が数多く生きており、戦争がデジタルではなく、生の記憶として息づいていたため、特攻を美化しているとして、批判を受けることになったのです。

同時期の999ではクレアが死んでいますが、これは批判されなかったように思います。
「さらば」だけが批判の槍玉に挙がりました。

クレアが批判されなかったのは、咄嗟の判断で鉄郎を守ろうとしたためです。
誰もそれを防ぐことが出来ず、クレア自身の判断の結果でしかありません。

しかし「さらば」のラストは上官の命令によるものなのです。
誰もが古代を止めることが出来た筈で、古代の意志でもありません。
今観れば「自動航行か遠隔操縦でやれば。」と思う方も多いことでしょう。

これ以降松本氏は登場人物の死に関して、非常に過敏になっていきます。

9.続編のための続編

「ヤマト2」は「さらば」と同時進行で作画されましたが、本格的に作画が行われたのは放送2ヶ月前。
作画スタッフは「さらば」メインで作業していました。

西崎氏は「さらば」が不振なら、ヤマトを降板し、「ヤマト2」の製作を中止すればいいだろう。
ぐらいに思っていたのでしょう。

それが「さらば」がヒットしたため、西崎氏は降板せず、「ヤマト2」を本格的に作り始めます。
上述の特攻の美化をなくすためには、登場人物の死をなかったことにするしかありません。
それは結果として、更なる続編を作ることも可能にします。

特攻の批判をかわしつつ、続編も作ることが出来る。まさに一石二鳥。こんな旨みのある新作はないでしょう。

結果、結末だけを変更した「さらば」の水増し作品「ヤマト2」が完成します。

私は、デスラーが復活した際、ちゃんとした説明があったように、他の人物にも納得出来る理由があれば、「ヤマト2」での復活も受け入れられたのですが、何の説明もないため、一気に興味が失せてしまいました。
今では「さらば」をパラレルワールドで済ませばいい話ですが。

10.シリーズ物としての形態と設定の弊害

ヤマト以前にもシリーズ物と呼ばれる作品は存在していました。特撮ではゴジラ。アニメではマジンガーZ。実写では寅さん、TV時代劇です。

特撮のゴジラ、アニメのマジンガーZは、続編ごとに主要登場人物が入れ替わります。
一方寅さん、TV時代劇は、人物がほぼ同じ。ヤマトも同様です。

ところが寅さんやTV時代劇には、ヤマトのように西暦何年という明確な設定はありません。
ここがヤマトの斬新さではあるのですが、この細かな設定があるが故に、その矛盾が露呈することになってしまいました。

細かな設定を初めて導入したのがガンダムのように思われてしまうのは、ヤマトの詳細な設定が形骸化してしまったからなのです。

特撮やそれまでのアニメのように主要人物を変え、細かな設定をアバウトなファンタジー的なもので続編を製作すれば、ここまでの矛盾は発生していなかったでしょう。
事実松本氏による「永遠に」の原案では、古代達の子孫の話で、西暦何年という明確な設定はなかったのですから。

これ以降の続編は、ここまでのことを繰り返すだけなので、詳しく書きません。
松本氏と西崎氏の対決、商業主義、上映時間、ヤマトの形をした大和、前作の無視、続編のための続編、細かな設定の弊害。
矛盾した世界観を、さらに矛盾した世界観で追加し上書きする。
こうして混沌としたヤマトワールドが構築されていくのでありました。

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