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AlphonseのCINEMA BOX

管理人Alphonseが観た映画の感想を書いているブログ。

機動戦士ガンダム特集


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■この作品の功罪

本来なら初回放送時の低視聴率のために人々の記憶から消えていくはずだったのですが。。。

「宇宙戦艦ヤマト」人気が後押ししたのかも知れない。
一部のアニメファンやSFファンが熱狂したからかも知れない。
正確な理由はわからないけれど、再放送を繰り返すことで「ガンダム」は時代の異端児から、革命児になり、寵児となっていきます。

ここではその後のアニメに与えた影響(良くも悪くも)をわかる範囲で書いていこうと思います。
あくまで自分のわかる範囲なので独断と偏見に満ちていますが。

専門用語(カタカナ単語)の氾濫

「宇宙戦艦ヤマト」にも専門用語はありましたが、この作品はそれ以上になりました。
専門用語といっても科学技術用語や兵器の呼称だけにとどまりません。

まず、地名(基地、施設名)がこの作品には多く登場します。
「宇宙戦艦ヤマト」にも地名というか惑星名や宇宙空間が存在しましたが、それはあくまで「遠い宇宙のどこか」の一言で一応説明が出来るものだったし、日本語の呼称も多かったので、ある程度想像がつきました。
ところが本作では、サイド7に始まりカタカナの地名テンコ盛りなのです。
しかも、キャルフォルニア(カルフォルニアのもじり)は地球の地名なのに、テキサスは宇宙空間のコロニーなのです。
地名(基地、施設名)だけ取り上げても統一感がないので混乱してしまいます。
おまけにマゼランという地名(人名)が兵器名(戦艦)につけられているからさぁ、大変。
地名(人名)の事を話しているのかと思いきや戦艦のことだったという誤解が生じます。

次に、本作にはシャアのように一つのものに複数の呼称が存在します。
それは人名だけでなく、兵器にも存在するという徹底ぶり。
説明なしでもわかるように画面の切り替えやアップでわかるようにしていますが、これまでの「マジンガーZ」や「宇宙戦艦ヤマト」にはなかったものです。

科学技術用語に至っては言うまでもないでしょう。
「マジンガーZ」には光子力や超合金Zという科学技術用語が登場しますが、日本語なので意味がなんとなく想像できます。
「宇宙戦艦ヤマト」のワープは、作中でしっかり説明されています。
しかしミノフスキー粒子は、作中で一切説明されません。

兵器に関しては、さらなる誤解を招くことになります。
モビルスーツは何かの洋服かと勘違いしてしまうでしょう。
ザク、グフ、ドムは単なるオノマトペにしか思えないでしょう。
エルメス、ジム、ボールが兵器であると誰が思うでしょう。

結果、アニメファンが異世界の住人のように感じてしまう一因となってしまうのです。

これらの専門用語は登場人物達には常識なのでしょう。
なんの説明もありません。
「宇宙戦艦ヤマト」では字幕を出すなり、ナレーションなどの説明があったし、NHKの大河ドラマのような歴史ドラマでも字幕を出すなりの配慮があったし、特撮映画は博士が登場して解説してくれました。
ところが、この作品は説明の多くがアニメ雑誌や、設定資料集といった文献でしか目にすることが出来ません。
リアルを追求する意味で登場人物の会話に専門用語が飛び交うようなシーンが多くなったのは間違いなくこの作品からです。
リアルさを追求したロボットアニメが多く作られた80年代前半はまさにその全盛期で、一度見ただけではわからない作品ばかりになり、作品を見る前にある程度の予習や観賞後の復習が必要になっていくのでした。

後付け設定の登場

専門用語と同じく後付設定が本作には数多く登場します。
原作の富野喜幸(由悠季)氏ですら思いついていなかったであろう事柄が次々と判明していきます。
モビルスーツを開発・製造した会社はどこか?
などはそのいい例で、テレビシリーズや映画版では一切触れていません。
ところが後の設定ではアナハイム社などが開発、製造したことになっています。
思うに有識者(誰?って感じなのだが)が理論立てて解説したり、後のアニメ作品から触発されたためでしょう。
あくまでこれはこの作品に人気があったためで後付け設定される作品は、ある意味名誉なことかもしれません。

ヒーロー像の変貌

これまでのロボットアニメの主人公は正義感に燃えるヒーローが大半でした。
ところがこの作品は傷つきやすい繊細な主人公が登場します。
戦うのを嫌がり、主役メカに乗るのを嫌がります。
作品発表当時はこれが新鮮だったし、等身大の主人公だったかもしれません。
ところが、この作品以降、これまでの主人公たちを「熱血バカ」「死に急ぐバカ」と揶揄するようになるのでした。

敵役の変貌

これまでのロボットアニメの敵役は世界征服(地球征服)が定番でした。
ところが、「宇宙戦艦ヤマト」の移民目的のように、敵の目的は必ずしも悪とはいえないものになっていきます。
本作では敵には敵の事情があり、家族がいて愛する者もいることが描かれます。
本来嫌われ者だった敵役シャアが主人公アムロより人気が出てしまうようなことまで起こり、後年、目的がよくわからない敵と戦う作品も登場してくるようになるのでした。

大人向けアニメの登場

「宇宙戦艦ヤマト」はかなり大人に支持される作品であったし、「あしたのジョー」も大学生には人気がありましたが、この作品はそれ以上のクオリティの高さと複雑さを持っていました。
実際、私は小学生の頃さっぱり内容が理解できませんでした。
今でも小学生には解説なしでは内容が理解できないと思います。
この作品以降、アニメは小学生のものという枠組みはなくなってしまうのでした。

アイキャッチの登場

テレビシリーズにしか登場しませんが、アイキャッチというCM前か後に一瞬入る映像があります。
NHKではCMが入らないため30分のアニメ番組では前半と後半の真ん中15分ごろにストーリーに関係ない映像が入ります。
これを有名にしたのはガンダムが最初(ルパン三世が最初?)かどうかわからないのですが、ガンダム以降のアニメではアイキャッチをよく見るようになりました。
作り手の手抜きだという考え方もありますが、当時はビデオ黎明期だったという事もあり、CM抜きで映像を録画したい方にはうれしい配慮だった事でしょう。

無国籍アニメの登場

「宇宙戦艦ヤマト」では日本人のみがヤマトに乗船しています。
地球の命運をかける旅なのに日本人だけに任せて大丈夫なのか?
というツッコミを回避するためか、ガンダムは外国人と思しき登場人物が多数登場します。
それまでは「マジンガーZ」のように日本が舞台で、登場人物は日本人と決まっていたのですが。
この作品以降、国籍不明の人が多数登場するアニメが量産されるようになり、それまで黒一色だった髪の毛や瞳の色が極彩色豊かになってゆくのでした。
(もしかしたら、着色する絵の具代が安くなったからとか、セル画への着色からコンビュータでの着色になったためかも知れませんが真偽の程は不明です。)

豊富な登場人物

「マジンガーZ」の登場人物は極めて少なく、「宇宙戦艦ヤマト」に関してもそれほど多くの人物は登場していません。
ところが、この作品は物語の途中で人物が死んでしまうため、必然的に多くの人物が登場することになってしまいました。
ロボットアニメでありながら戦争を題材にした以上、戦死者が出るのは仕方がないとはいえ、あまりに多いです。
まぁ、これは物語を叙事的にしたため仕方ないのですが、ストーリーのネタに困ってくると新しい人物を登場させる作品が多くなったのはこの作品が原因かもしれない。

複雑な人間関係

主人公アムロは父親の元で育った機械付きの少年。
その少年に好意を寄せる近所の女の子フラウ。
ここまでは良しとしよう。
ところが、ここからアムロは年上の女性に憧れ、その年上の女性には婚約者がいて、もうすぐ結婚だというのに戦死してしまう。
アムロは意気消沈する間もなくララァと運命的な出会いを果たす。
実はララァはシャアの恋人でアムロと三角関係に。。。
一方のフラウはアムロの仲間といい感じに。。。
他方では、仲間のカイが恋焦がれた女スパイは戦場で散ってしまうし。
艦長とパイロットは操舵士と三角関係に。
ここまでくると昼メロのノリです。
どこが正義のヒーローが活躍するロボットアニメなのか?と思ってしまう。

では敵役はどうかといえば
シャアはザビ家によって父を殺されたため、ザビ家に復讐を誓う。
ギレンは己の野望を果たすため父を殺すが、妹のキシリアに父の仇として殺されてしまう。
そのキシリアもシャアの復讐のため葬られてしまう。

ここまで凝った人間関係はこの作品が最初ではないかと思います。
まぁ、これも物語を叙事的にしたため仕方ないのですが、この作品以降登場人物は怒ったり笑ったりすることもない感情表現が乏しい、深みのない平板な人物が多くなったのはこの作品が原因かもしれない。

単純明快な作品の減少

この作品以降、リアルにこだわるあまり単純明快で胸のすくような爽快なアニメが減少していきます。
何かしらの問題定義があったり、複雑な設定があったり。。。
所詮はフィクションなのだから荒唐無稽なそんな馬鹿な。。。
なんて話もあっていいはずなのですが。
リアルにこだわるあまりロボットアニメ自体がどんどん窮屈なものになって、新作が作られなくなったのはこの作品が原因かもしれない。

反動としての宮崎駿氏の登場

リアルな設定、専門用語の登場、ヒーロー像の変貌、敵役の変貌etc。。。
そんな様々な要素の集大成として1984年「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」が公開されました。
こうした傾向に、アニメ本来の持つ利点(幼い子供にも理解できる)とか、夢と希望に満ちた作品が姿を消していくことに危機感を覚えたのか、その4年後1988年に宮崎駿氏は「となりのトトロ」を制作するのでした。

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