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AlphonseのCINEMA BOX

管理人Alphonseが観た映画の感想を書いているブログ。

カメラを止めるな!特集


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■長回し作品として

本作ではホラー作品を長回しで撮影するという手法をとっています。
ホラー作品自体が緊張感の出やすい作品なので、前半の長回しパートは大正解でした。
あっという間に前半終了したような感じでした。
それはテンポが良かったということではなく、画面に釘付けだったからです。
その長回しパートについては詳しく触れません。
実際に観て楽しんでください。

ここでは、本作のタイトルの由来ともなった30分以上に及ぶ長回しについて色々書いておこうと思います。

長回し作品

長回しとは、1つのシーンを、撮影し続ける映画手法の一つです。
その効果は、キャストもスタッフも失敗が許されないため、画面に緊張感が出る。
と言われています。
長回しがいつから始まったのか、どんな作品があるのかは、ウィキペディアでも調べてください。

長回しと聞いて最初に思い浮かぶのは「セーラー服と機関銃」です。
当時無名だった薬師丸ひろ子の出世作になり、相米慎二監督の代表作ともなりました。

個人的には長回しは観客には気付かれにくい手法だと思っています。
「セーラー服と機関銃」も長回しがあるのを知らないで観たら、どんな感じがしたか定かではありません。
観賞前から長回しがあることを知っていたので、
「どこからどこまでがワンカットなのだろう?」
という目線でしか観ていなかったように思います。

「スネーク・アイズ」という作品にも冒頭長回しがあります。
こちらの作品も同様に長回しの長さばかりを気にして観ていました。
確か同じブライアン・デ・パルマ監督の「ミッション・インポッシブル」にも途中長回しがあった筈です。

長回しがあるのを知らないで、鑑賞中に気がついたのは、「THE 有頂天ホテル」ぐらいです。
気付いた時は思わず、
「おぉ!」
と唸ってしまいました。

そのくらい長回しは気付かれにくい演出だと思っています。
無理もありません。
目に映る風景に、カットはかかりません。
まばたきをしても風景のアングルが急に変ったりもしません。
日常と同じように見えてしまうので、気付かれにくいのです。

また、キャストに舞台出身者でもいれば、それほど凄いことではないでしょう。
舞台で数十分ノーカットなど当たり前だからです。

なぜ長回しで撮影されるのか?

それでも長回しが凄いといわれるのは、ノーカットで撮影し失敗が許されない中でキャストとスタッフが真剣勝負をしているからです。
そして、気付かれにくいということはリアルに近い映像が撮れるということでもあります。

「セーラー服と機関銃」の薬師丸ひろ子は、それをやってのけました。
相米慎二監督も何テイク撮ったのか知りませんが、その長回しを成立させました。

「スネーク・アイズ」では、エキストラが大勢入り乱れる中でそれを成立させました。
画面から人が消えたり、入ったり目まぐるしく変ります。
この混雑の中で物語はちゃんと進んで行きます。
この手法は「THE 有頂天ホテル」にも通じるものがあります。

「ミッション・インポッシブル」では事件経過を、ある視点からずっと追いかけるような手法を使っています。
そして、その視点が実はトリックになっているというものでした。
この手法は本作に通じるものがあります。
ある視点から事件を追ってゆき、後にその事件にはちゃんと理由があるというものです。

長回しの是非

長回しも長ければいいというものではありません。
延々と退屈な映像を見せられても飽きてしまいます。
深刻なシーンが続いても息が詰まりそうになります。
(余談ですが、水中を泳いでいるシーンで呼吸を止めてしまい、本当に息が詰まりそうになるのは私だけ?)

長回しも使い方一つで優れた演出にも、冗長さを強調してしまうことにもなるのです。

実写特有の表現長回し

以前、実写映画化特集で、実写には実写にしかできない表現方法があると書きました。
まさにこの長回しはアニメ作品にはできません。
手塚治虫氏は「ジャンピング」で、大友克洋氏は「大砲の街」で長回しに挑戦していますが、結果的にそう見えるだけであって、絵コンテというもので既に完成しています。
「セーラー服と機関銃」のように破片が顔に飛び散るようなハプニングが、アニメ作品には入り込む余地がないのです。

日本映画が、漫画やアニメの実写化作品ばかりになって、飽き飽きしていた観客には新鮮に映ったかもしれません。
それが、本作がここまでヒットした理由の一つかもしれません。


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■ホラー作品として

序盤のホラー部分は、B級感満載です。
演じる役者は無名な人ばかり。
セリフも棒読み感一杯。
ゾンビが現れる原因もどこかで観たようなものだし、映画同好会か素人が撮影したような感じで始まります。
その後の展開については詳しく触れません。
実際に観て楽しんでください。
そのかわり、ホラー作品について色々書いておこうと思います。

そもそもこの作品。
製作費は300万円です。
なぜホラー作品は低予算で出来るのか?
低予算で作られ大ヒットしたホラー作品「13日の金曜日」を例に挙げて説明してみましょう。

「13日の金曜日」のあらすじ

「13日の金曜日」とは、

忌まわしい伝説のある場所に肝試しとばかりやってきた若者たち。
そこに伝説どおりに現れる殺人鬼。
逃げまどう若者たち。
泣き叫ぶ女性。
果たして最後まで生き残ることが出来るのか?

という作品です。

なぜホラー作品は低予算で出来るのか

今からすればよくある話ですが、低予算だからこその話なのです。
具体的に説明していきましょう。
登場人物が若者ばかりなのは、出演料を抑えるためです。
もちろん、年寄りではすぐに殺人鬼につかまってしまう、という事もあります。

次に伝説どおりに現れる殺人鬼。
格好はどんなものでも構いません。
凶器さえ持っていれば、あっという間に完成、予算はいりません。

逃げまどう若者たちは、セットを組む必要がありません。
撮影許可さえ取れれば、近場の山林を走りまわるだけでよいのです。

泣き叫ぶ女性は、女優さんの演技一つで出来てしまいます。
またホラー作品では、不可欠な要素でもあります。
ドラキュラ、フランケンシュタインなど、往年の名画を観るまでもなく、女性の叫び声は見せ場の一つ。
若い女性が大声を出して叫ぶ事で、観客は何事かと銀幕に注目してくれるからです。

他ジャンルではダメなのか

恋愛映画のように綺麗に着飾る必要がないので、衣装代はかかりません。
逆に逃げまどうため、ボロボロの古着の方がホラー作品には似合うぐらいです。
洒落たカフェで会話なんてことも、彼や彼女の自宅も登場しませんから、セットを組んだり借りたりする必要もありません。
ネオンの夜景も必要ありませんから、各地でロケをする必要もなく、一箇所で撮影し移動の交通費も安く済みます。

アクション映画のようにカーチェイスも必要ないので、車両代もかかりません。
逆に車で逃げてしまうと殺人鬼が追って来れないので、ホラー作品として成立しなくなります。
また得体の知れない殺人鬼が武器や素手で倒れてしまっては、これまたホラー作品として成立しなくなります。
そのため銃も刀も派手な格闘も爆発も必要ありません。

本作ではゾンビ映画でしたが、ゾンビにも衣装代はかかりません。普段着で一向に構わないのです。
ともするとハロウィンの仮装より安く済むかも知れません。

なぜホラー作品で海外の監督はデビューするのか

このように、いかにホラー作品が低予算で製作できるか、おわかりでしょう。
そのため、無名で資金力のない海外の映画監督はホラー作品でデビューしたり、注目を浴びます。
スピルバーグはあおり運転の恐怖を描いた「激突!」でメジャーに。
リドリー・スコットは「エイリアン」でSFに新風を。
サム・ライミは「死霊のはらわた」でスプラッターホラーの旗手へ。
ジェームズ・キャメロンは「殺人魚フライングキラー」という空とぶ魚のホラー作品を手がけています。
海外ではありませんが、大林監督もホラー作品がデビュー作です。

この5名の監督のその後の活躍はここに記すまでもありませんが、ホラー作品には監督として必要な要素が詰まっているため、ホラー作品で注目される監督が有名になるのです。

低予算だけに、役者の演技で観客を圧倒することは出来ません。
観客を圧倒する演技を、役者から引き出さなくてはなりません。

殺人鬼も名演技を期待できませんから、いかに怖くさせるかお化け屋敷の要領でいきなり登場させたり、思わせぶりな演出が必要になります。

逃げ回る場所も本当は、のどかな田園地帯かも知れません。
それをいかにも奥深い山林のようにみせなくてはなりません。

演技指導、演出力、カット割り、照明の当て方、人物をどのように配置し、どんなアングルで撮影するか、そういった映像作品に必要な基本的なことが非常に重要になってきます。
そして、どれだけ画面に緊張感を持たせることが出来るのか、監督の力量が試されます。

また、原作つきの作品では、著作権使用料が発生するため、これまた低予算で出来ません。
そのため、脚本も監督自ら手がけることになります。
話の内容も観賞に耐えうるか、そういった事も試されるのです。

なぜホラー作品には続編が多いのか

ドラキュラやフランケンシュタインは言うに及ばず、エクソシスト、オーメン、ジョーズ、13日の金曜日、ゾンビ、エイリアン、エルム街の悪夢、ポルターガイスト、ターミネーター、リング、バイオハザードetc。。。
ホラー作品には続編が目白押しです。
というのも、映画は見世物小屋が進化したものだという説があります。
そのため、見世物小屋のようなエロくて、グロいもの、非日常的なものが映画界で重宝がられたからです。

他にも、映画がいつの間にかデートコースに組み込まれるようになったということも一因です。
いわゆる吊り橋効果というもので、遊園地の絶叫マシンに人気があるのと同じく、ホラー作品を見た後では異性との親密度が変わるからです。

映画会社としても大人2人分の料金で観てもらえるので、通常より倍の観客動員と興行収入が見込めます。
しかも低予算で製作されているので、他ジャンルより利益率が良くなります。
そんな思惑が込められていたのか、

「決して1人では観ないでください。」

というキャッチコピーのホラー作品もありました。

このあたりの経緯は恋愛作品や、子供向け作品が毎年のように公開されるのと同じです。
つまり、1本の作品を1人ではなく、1組の男女、1組の親子で観てもらえるから重宝がられるのです。
ペアの鑑賞券なんてのが、もてはやされるのも同じことです。

しかもホラー作品は映画館で観た方が怖いのです。
テレビだとCMが入るため、多少恐怖感が和らぎます。
レンタルやネット配信も明るい部屋で観ることができます。

ところが、映画館は暗く、猫が飛び出しただけのシーンに、後ろの誰かが驚いたりします。
それが実は一番怖かったりするのです。

誰かが驚くと、館内の雰囲気が恐怖に満ちてきます。
恐怖は伝染するので、映画館の中で誰かが悲鳴をあげようものなら、瞬く間に伝染します。
いわゆるパニック状態です。
中盤ぐらいで悲鳴が上がったりすると、クライマックスの頃には悲鳴の大合唱。
大して怖くもない作品でも、ものすごく怖いものに感じてしまうのです。

こうしてホラー作品は大ヒット。
ヒットに気を良くした映画会社が続編を決定してゆくのです。

なぜホラー作品でデビューした監督は他ジャンルを撮れるのか

日本ではリングのように、一度ヒットするとその続編ばかりを製作してしまいます。
監督の得意分野を、勝手に製作や観客が決めてしまうため、同じようなジャンルばかり手がけるようになります。
監督が映画会社に雇われていたりすると、その傾向はますます顕著になります。

一方、海外では監督自ら製作に乗り出すので、いろんなジャンルを手がけるようになります。
スピルバーグの「E.T.」。
リドリー・スコットの「グラディエーター」。
ジェームズ・キャメロンの「タイタニック」。
サム・ライミの「スパイダーマン」。
これまた海外ではありませんが、大林監督の「転校生」。
どれもホラー作品とは似ても似つかぬ作品ばかりです。

ところがホラー作品も、感動巨編も感情を揺さぶるという点では共通しています。
「E.T.」、「タイタニック」、「転校生」で涙を流すのも、アクション映画を観た後、肩で風を切って歩きたくなるのも、ホラー作品を観た後、暗闇が妙に怖くなるのも、すべては作品を観て、感情を揺さぶられるからです。

そのため、感情を上手く揺さぶれる監督はホラーだろうと、アクションだろうと、恋愛だろうと、いとも簡単に映像化できてしまうのです。
その昔、大林監督が確かこんなことを言っていました。

「映画は所詮、嘘に満ちた世界です。
死んだ人間が生き返ったり、敵の銃弾が一発も当たらなかったり、偶然の出会いが何度も重なったり。。。
ですが、人物の感情に嘘があってはいけません。
人物の感情に嘘があると、すぐに観客はソッポを向いてしまいます。」

主人公の復讐心に共感できなければ「酔拳」は成立しませんし、主人公の正義に共感できなければ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」や「るろうに剣心」は面白くありません。
男女2人の気持ちに共感できなければ「転校生」も「タイタニック」も「君の名は。」も成立しません。
そして、ダミアン、ジョーズ、ジェイソン、フレディ、ゾンビ、エイリアン、ターミネーター、貞子、アンデッドが怖くなければ、ホラー作品は成立しないのです。

血まみれになればいいのではありません。
外科医が怖く見えるでしょうか?
大怪我をした救急患者が怖く見えるでしょうか?
そこには恐怖がありません。
ホラー作品の殺人鬼は感情を揺さぶる恐怖があるから、怖いのです。

本作で冒頭何十テイクも撮り直し、女優を殴り、男優につかみかかってまで、監督が演技指導していたのはそのためなのです。

たかがホラー、されどホラー。
ホラー作品一本、まともに撮れないような監督では、どんな多額の製作費をつぎ込んでもダメなのです。


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■感想

いやぁー面白かった。
一本でホラー映画とコメディー映画を楽しめる。
お得感一杯の映画。
ホラー映画としてはB級。
コメディーとしても「ラヂオの時間」の焼き直しでしかなく、B級感は否めない。

しかし、B級とB級を足すのではなく、かけるとA級になる。

というお手本のような映画。
コメディー要素の多い作品なので、細かいことはあえて書きません。
オチがわかってしまうとつまらないだろうから。

あえて書くとホラーパートでは、
3人の会話の途中で変な間が出来る違和感が妙にリアルで新鮮でした。
「家族ゲーム」のようにもみえます。
「ちょっと。ちょっと。」のシーンは、すぐに意味がわかりました。
そして、斧が頭に刺さった女性が立ち上がるシーンは大笑いしました。
ちなみに「One Cut of the Dead」は「ゾンビ」の原題のもじりです。

舞台裏パートでは、
護身術の映像を観ているのが、「お葬式」みたいでした。
伊丹十三監督は「映画は脚本が全てだ。」と言っていましたが、それを思い出さしてくれる作品でした。

とにかく、観て楽しむべし。
そして、観賞後すぐに最初から見直すと更におもしろさが倍増する作品です。


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■作品紹介

◆制作年:2017年◆タイトル:カメラを止めるな!
◆監督:上田晋一郎◆主演:濱津隆之、真魚◆助演:しゅはまはるみ、長屋和彰、秋山ゆずき
◆コメント:最後まで席を立つな。この映画は二度はじまる。
俳優、および監督名はインターネット上で調べたものを掲載しています。
主演、助演の区別は独断と偏見で決めさせていただきました。

■あらすじ

ゾンビ作品をノーカットでネットで生中継する。というお話。


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SPECIAL BOX。
第23弾は、「カメラを止めるな!」特集です。

カメ止め画像
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テレビ放映されたことで、急遽特集を組むことにしました。

それでは、お楽しみください。

作品紹介&あらすじ
感想
ホラー作品として
長回し作品として
コメディー作品として
編集後記
参考にしたサイト

カメ止め画像
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